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所長コラム

税務調査~1億円の有価証券(自社株式も)を持っている人は注意が必要です!

2015 年 5 月 29 日

毎年1年の上半期は会計事務所の繁忙期です。

いつものことですが、会計業界は季節労働者だな・・と感じます。。

今年もようやく5月の最終週になり、申告を行う業務のゴールが見えてきました。

職員の皆にも大変な思いをさせているだけに、来月の打ち上げが今から楽しみ
です(笑)。

 

今回のメルマガでは、実際には昨年から始まっている税務当局の課税の強化策に
ついてまとめてみました。

特に「海外に5,000万円以上の財産を持っている人」、「日本国内に1億円
以上の資産を持っている人」に対して国税庁は監視の目を強めています。

今後の動向を見極めていきたいとは思いますが、世界のグローバル化に反する
税制には間違いありません。

 

1.財産債務調書

平成28年から「財産債務調書」という法律で定められた新たな調書(「法定
調書」)を税務署に出すことになります。

「法定調書」とは、税法で税務署に提出が義務づけられている書類です。

現在59種類あり、株式の配当を支払った場合はその株式会社が、生命保険金を
支払った場合は生命保険会社が税務署に提出しています。

「財産債務調書」はもともと年間所得が2,000万円超ある人が、確定申告時に
提出しなければならなかった「財産債務明細書」を改定しています。

「財産債務調書」の提出基準は「年間所得が2,000万円超」で、その年の
12月末時点で「保有資産が3億円以上または株式など有価証券の合計額が
1億円以上」が条件です。

記載内容は

●住所

●氏名

●マイナンバー

●財産・債務の種類や数量、その価額

●不動産など財産の所在

●有価証券の銘柄、取得時の価額

●未上場株式の場合は所定の「見積額」

となりそうです。

今後は「財産債務調書」提出の内容に虚偽記載があったり、あえて出さなかった
場合は懲役刑や、過少申告加算税の上乗せなど罰則が課されることになります。

 

2.国外財産調書

平成26年から海外に5,000万円超の財産を持つ人に「国外財産調書」を
確定申告期に提出することになりました。

国外財産調書に記載するのは、毎年12月末時点で海外に所有している財産全て
です。

平成25年時点で1億円以上の金融資産を持つ富裕層は、国内に100万
7,000世帯ありますが、このうち10%の世帯が5,000万円超の
国外財産を持っていると考えられています。

しかし、平成26年3月までに「国外財産調書」を提出した人は、5,539人
だけでした。

国税庁は昨年7月以降、国外財産の提出義務があると思われながら「国外財産調
書」未提出の人に対して「国外財産調書の提出について」とする文書の送付を
行っています。

この文書自体は行政指導のために法的拘束力はなく、回答する義務もありません
が、回答が無い場合には、再度国税庁から同じ内容の文書が送付されたうえで、
将来の税務調査に発展する可能性があります。

また初年度に「国外財産調書」を提出した人でも、内容に不備、もしくは誤りが
あると思われる人には「国外財産調書の見直し・確認について」とする文書が
送られてきています。

これらの文書の目的は、

●「国外財産調書」制度の周知徹底
「国外財産調書」が提出されなかったり、虚偽の記載があった場合には、再度
文書を送っているため、「認識が無い」ということは認めない

●「国外財産調書」の不提出や虚偽記載の確認
再度確認文書を送っているため、「国外財産調書」を出していなかったり、
虚偽の記載 をしていた場合は、「間違いである」とは認めない

●情報入手
国外財産が5,000万円以下で、本来は「国外財産調書」を提出しなくて
よい人に対して所得や相続財産の申告漏れ等の確認を行う

平成27年3月の段階ですでに「国外財産調書」未提出で、税務調査で所得が
漏れていた人に対してペナルティーを科しており、施行後すぐにしては厳しい
対応です。

「国外財産調書の」記載内容は、

●現預金

●不動産

●有価証券

●貸付金

など財産の種類ごとの数量や価額、所在地などを記入し、税務署に提出することに
なります。

財産の価額は原則として時価ですが、時価評価が難しい財産は税務署所定の計算
万法に沿った「見積価額」を記載します。

平成28年3月からは、あえて「国外財産調書」を出さなかった場合や、虚偽の
記載を行った場合には、確定申告時の所得税の申告漏れに対して、「通常の過少
申告加算税10%に加え、5%の上乗せ」か、「1年以下の懲役または50万円
以下の罰金」となります。

 

3.出国税

平成27年7月から「出国税」(国外転出時課税)が始まります。

株式など「有価証券を1億円以上所有する方を対象」に、国外へ居住の拠点を
移して非居住者になる場合、有価証券などの「含み益」に対して所得税
(復興特別所得税を含む)を課税する制度です。

対象となる有価証券は

●株式(非上場株式含む)

●投資信託

●新株予約権

●社債

●国債

●未決済のデリバティブ(金融派生商品)取引

●信用取引

非上場株式などは、相続税の財産評価での方法を参考に時価を計算します。

出国税の課税対象は、原則として出国時点での時価で有価証券を売却したものと
見なして、有価証券の取得時の金額を差し引いた含み益(キャピタルゲイン)
になります。

この含み益に所得税の税率15%(復興特別所得税別途加算)が課税されます。

仕事上転勤などで海外に一時的に居住するため、納税したくないと判断した場合
は、出国前に「納税猶予」を税務署に届け出ます。

原則として5年間ですが、最長10年間課税が猶予されます。

ただ、この制度もあくまで「猶予」であって、課税対象である事実は変わりが
ないため、その出国時の確定申告書の提出期限までに、納税猶予分の所得税額
(含み益に課税された金額!)に相当する担保(不動産、国債など)を税務署に
差し入れなければなりません。

そのうえで税理士などを「納税管理入」(納税者本人に代わって納税手続きを
する人)として届け出をして始めて適用されます。

加えて出国中、税務署へ毎年有価証券の所有状況を届け出る必要があり、
それを怠ると納税猶予は打ち切られ、所得税と利子税を納付しなければ
なりません。

また「納税猶予」を受けた人が、出国時に所有していた有価証券などを売却せず
に帰国した際は、出国時に納税した場合と同様に、帰国後4ヶ月以内に税務署に
対して「更正の請求」をし、出国税による課税の取り消しを求めます。

「納税猶予」が面倒と思う人は、納税をしたうえで出国することになりますが、
非上場株式等の計算には相当の手間がかかり、納付する現金の調達も含めると、
相当の時間がかかってしまいます。

加えて一旦納めた税金を有価証券を売却することなく帰国した場合は、
「納税猶予」時と同様帰国後4ヶ月以内に「更生の請求」の手続きを行って
税金を還付させなければなりません。

実際には「納税猶予」を受ける人が大多数だと考えられますが、「納税猶予」の
手続きはかなり面倒です。

さらに出国税は、国内に有価証券を1億円以上保有している人が出国した場合だ
けでなく、日本国外の非居住者へ有価証券を贈与や相続、遺贈をした場合でも、
時価で譲渡したものと見なして含み益に所得税を課税することになりました。

こうした贈与や相続、遺贈にも同様に「納税猶予」の制度を設けて這います。

贈与や相続、遺贈を受けた人が有価証券を保有したまま5年以内に帰国する時は、
やはり帰国後4ヶ月以内に「更正の請求」をして課税を取り消さなければ
なりません。

オーナー企業では自社の株式の含み益が1億円を超えることはざらです。

しかし、非上場株式である自社株が即キャッシュになることはないため、
納税資金の確保は非常に難しい問題です。

少なくとも非上場株式である自社株式の含み益に課税しないことが実務では
必要です。

いずれにしても、海外財産を保有すること自体に税務リスクはありませんが、
きちんと税務署に対して情報開示をした上で、行わないとかなり厳しい
ペナルティーになる時代になったと言わざるを得ません。